匿名組合・任意組合とは?
不動産クラウドファンディングには、
「匿名組合」と「任意組合」の2種類があります。
この2つは混同されやすいですが、投資家の権利やメリット、リスクなどが異なります。
それぞれの仕組みや特徴、メリットとデメリットを解説します。
目次
匿名組合 任意組合の大きな違い
不動産の所有権を誰が持っているか、が違う
匿名組合と任意組合は、複数の人が共同で事業を行うための契約形態の一つです。
どちらも、複数の投資家がお金を出して、不動産の運用に使うという点では共通しています。
しかし、根本的な違いとして「不動産などの組合の財産の所有権は誰にあるのか」という点が挙げられます。
匿名組合の場合、組合は投資家からの出資により集めた資金で不動産を取得しますが、取得した不動産の所有権は事業者にあります。組合員である投資家は、所有権ではなく、不動産から得られた利益の分配を受ける権利や、元本の返還を受ける権利を得ることになります。
これに対し、任意組合の場合、取得した不動産は組合員の共有になるため、出資持分割合に応じて各組合員に持分が帰属することになります。
匿名組合 任意組合の様々な違い
匿名組合と任意組合では、不動産などの組合財産の所有形態が異なるため、以下のような様々な違いが生じます。
① 投資家の責任の限度
匿名組合では、不動産の所有権が事業者にあるため、所有者が負うべき責任は事業者が負うことになります。投資家は出資金額を限度とした有限責任を負うに留まります。したがって、事業により多額の損失が生じたとしても、投資家は自分が出資した金額を超えた損失を負担することはありません。
これに対し、任意組合では、不動産の所有権が投資家全員に帰属するため、所有者責任はすべての投資家が負うことになります。この責任は、事業により生じた損失額すべてを負担する無限責任です。したがって、損失額が多額な場合には、出資額を上回る損失を追加負担しなければならないリスクを負っているといえます。
② 損益の分配方法
不動産クラファンにける匿名組合では、優先劣後構造を採用しており、まず優先出資者である投資家に対して利益分配を行い、残った利益を劣後出資者である事業者に分配するケースが多いです。
これに対し、任意組合の場合は、優先劣後という概念がなく、事業者を含む組合員全員が対等な所有者となります。事業損益は、出資持分割合に応じて組合員全員に帰属することになります。
③ 所得の税務処理
匿名組合では、受領した利益は雑所得として総合課税の対象として申告することになります。なお、分配する利益は源泉徴収の対象となるため、事業者は源泉徴収後の利益を組合員に支払います。
これに対し、任意組合の場合は、各出資者が不動産の共有持分を有するため、不動産から得られた事業利益も直接的に出資者に帰属することから、その損益は不動産所得または譲渡所得として税務処理することになります。
④ 相続時の節税効果
匿名組合では、相続時には出資した元本が税務上の評価額として計上されます。当然、相続税の節税効果は見込めません。
これに対し、任意組合の場合には、現物不動産を相続する場合と同様に、評価額が時価より低くなることによる相続税の節税効果が見込めます。
任意組合は主に、この相続対策を運用の目的としているため、匿名組合に比べて運用期間が長いものが多くなっています。
※税務の詳細に関しては、顧問税理士又は管轄の税務署にご確認ください。
どちらを選ぶべきか?
不動産クラウドファンディングの匿名組合と任意組合は、似ているようで、それぞれ異なる特徴を持っています。
どちらの契約形態を選ぶべきかは、投資家の投資目的やリスク許容度によって異なります。
短期間で手軽に不動産投資を始めたい方は、匿名組合がおすすめです。
相続時の節税を兼ねて、長期的な運用をしたい方は、任意組合がおすすめです。
匿名組合と任意組合、どちらの形態で募集しているのかは、契約書に必ず記載があります。
どちらを選ぶか慎重に検討し、自分に合った投資方法を選びましょう。